[インタビュー訳]IMLAY:韓国のEDMが大きくなろうとするなら、私のようなポジションの仲間が増えなくてはならないと思います

昨年発表されたSHINeeジョンヒョン‘Inspiration’の共同作曲や、 BoAとBeenzinoの ‘No Matter What’のプロデュースなどでk-popでも名前を知られるようになったIMLAYの今年2月のインタビュー訳です。4月24日に発表されるジョンヒョンの ‘이야기 op.2’ にも3曲参加しています。

 

原文はこちら→IMLAY: 한국의 EDM이 커지려면, 저 같은 포지션의 친구들이 많아져야 한다고 생각해요 http://diffsound.com/imlay-%ed%95%9c%ea%b5%ad%ec%9d%98-edm%ec%9d%b4-%ec%bb%a4%ec%a7%80%eb%a0%a4%eb%a9%b4-%ec%a0%80-%ea%b0%99%ec%9d%80-%ed%8f%ac%ec%a7%80%ec%85%98%ec%9d%98-%ec%b9%9c%ea%b5%ac%eb%93%a4%ec%9d%b4-%eb%a7%8e/

2017/2/28  by イ・ジョンミン

 

インタビューをしながら驚くしかなかった。ひたすら家の中で曲を作る‘部屋プロデューサー’だと紹介した彼は、その‘部屋’の中で韓国の電子音楽市場の未来について深く悩んでいたのだから。その悩みはまだやっと23歳になった青年の悩みにしてはあまりに鋭く深く、聞いているうちにドキッとしたりした。

2016年にぐっと大きくなったIMLAYが、既存のミュージシャンたちと違ったのはおそらくこのような思考整理が確実だからだろう。他の人たちがしたこととは違うように、他の人たちが辿った道とは違うようにやってシーンを広げたいという願いが音楽に透過しているのだから。昨年より今年がさらに期待されるばかりのミュージシャンだ。

 

 IMLAYにとって2016年は忙しい一年だった。突然変化した現在の状況にはよく適応しているのか?

大きく変わった点はステージを準備し、フェスティバルに出ることです。もともと本業は家で曲を書くことなので、あまり資質はないです。イベントが一回あるたびに準備するかたちでやっています。

曲はよく書けているのか?

むしろ経験が増えて、曲を書くのが楽になったと思います。部屋プロデューサーたちが家でだけ悩んでいたのが、現場に出るとどんな音楽がかかったときに反応があるのか探ることができるんですよ。自分の曲をかけて現場の反応を探ることで、ある部分ではより助けになっています。

公式デビューが興味深い。すでに2014年に‘Adult’を出したが、ポータルのプロフィールのデビューは2016年の[World DJ Festival Sounce Parade]だ。

2015年度にイギリスで[Cloudheaded Vol.1]というコンピレーションアルバムが出たのですが、そこに収録された‘Sexual Party’が最初の公式音源だと言えます。‘Adult’は準備しながら書いた曲です。だから物足りなさも多いんです。ポータル社では‘Sexual Party’と関連した国内流通がなかったので認められないというんですよ。だからその次に何があるかというと、音源もあるけれどステージに立ったことがあったので‘これをあげるのがいいだろう’と、登録することになりました。

[第14回 韓国大衆音楽賞]の‘最優秀ダンス&エレクトロニック‐曲’候補にあがった。

ずっと[韓国大衆音楽賞]が好きでした。テレビにでるミュージシャンだけがミュージシャンではないじゃないですか。[韓国大衆音楽賞]は、小さいころから見ていて‘公正に賞をあげるんだな’と思いました。だから私と仲のいい兄達で、せっかく音楽を始めたのだからこの賞をもらおうと話もしました。実は候補選定基準をよく知りませんでした。正規アルバムを出せば、正規アルバムを聴いて候補になると思い‘今年は正規アルバムを出してみよう’と考えていたら、選定委員会から連絡がありました。3曲収録のシングルなので候補にならないと思っていたのですが、とても不思議でした。

※第14回韓国大衆音楽賞候補曲 Zanzan

 

SHINeeのジョンヒョンとの作業はどうだったか?‘Inspiration’2016)を彼と一緒に書いたが。

ジョンヒョンさんはアイドルらしくない、とてもアーティストな一面があります。だから、あらかじめ‘こうすればいいだろう’ということが描かれた状態でした。作業は一緒に調節して進め、イントロは完全に私の考えで始まり、後の部分はジョンヒョンさんの考えが多く入っています。

イェソとの作業はどうか?この時はミキシングとマスタリングを担当するエンジニアのポジションだったが。

イェソもセルフプロデュースに意味を大きくおいている友人です。だからたくさん介入したくないんですよ。本人がやりたいことをできるようにしておくのが、この友人のカラーをより表現できると思っていて。ですがミキシングとマスタリングの場合、難しい作業ですし、まだイェソが事務所もなく、こういった部分について助けたいと思って参加することになりました。

ミキシングとマスタリングについて、別に習ったことはあるのか?

独学です。実用音楽科に通いましたが、そこで教えてくれたことはある程度は合ってはいても、理論通りにやってもミキシングがうまくいくわけではないんですよ。実際にミックスして、編集してみなければ分からないですから。今も見方によっては‘勉強する’つもりで作業をしています。加えて私がもともとボーカルのサンプルをいじるのが好きで、編集をよくやってみていたので、さほど難しくはなかったです。

IMLAYが編曲したイェソの‘BudIMLAY リミックス)’はとても大衆的で驚いたが。

私はびっくりするほど大衆的なものが好きな人間です。歌謡が本当に好きです。SMとの作業も好きでやったことですよ。大きい事務所にしてはSMは‘アーティスティックだ’という考えを持っているからです。イェソの場合、私がフェスティバルの昼の時間に‘Bud’をかけたら、今と同じリミックスで聴かせたときにどこか昼の時間の雰囲気とよく合い、きれいに見えるのではないかと思って方向性を決めました。

 

大衆性を志向してはいても、ボーカル曲は多くはないが。

これから出るでしょう。(笑)現在、いくつか作られつつあるし、やらないわけではないです。ただ、私が持っている思想をまず表現することになっただけですよ。

1年の間、多様な役割を果たした。DJ、作曲家、プロデューサー、エンジニアなど。どんな役割に最も大きい満足を感じているか?

フロントマンも好きですが、曲を書くことがもっと好きです。だから自分のアルバムも、もう少しきちんとした企画を通じて上半期に出す予定です。加えて、あるアーティストのアルバムに私のカラーを込めて出すこともやりがいがあると考えていますよ。エレクトリックシーンからプロデューサーとしてある程度寄与したようで、満足しています。他の人をさらにもっと手伝えるといいです。

2015年にはシングル2曲を出し、2016年にはマキシシングルを出した。

もともと[Origin(2016)のために67曲書きました。ですが、これを編集してみるととても大変でした。作品集のような感じで出すよりは、一つの主題を持った、蓋然性を持ったアルバムを出したかったんです。[Origin]を聴いてみるとだんだん高まって、上がっていく展開です。私という人間が持つカラーを見せたい方向に作業し、トラックが有名になるのを願うよりは、3曲を丸ごと聞いてくれればという思いで出すことにしました。

上半期に企画中のアルバムはフルレングスか?

そうではないと思います。(笑)他の人を手伝っている状況なので、工場のように曲をたくさん出すことはできない状況です。そして1曲であってもきちんと、しっかり聴ける曲を作りたいです。私は現場感だけに溢れた曲よりは、iphoneで聴くにも良い曲を作りたいんですよ。

曲ごとに東洋的なカラーが生きている。事務所でもこういったスタイルと関連して‘Abstract Bass’という名前をつけてくれたと。

もともと東洋的なカラーが好きでした。そして所属事務所がアメリカのワシントンにあるのですが、最初にEDMを聴き始めたときに、とにかく海外に出なくてはと考えました。そうしてみたときに、自分はコリアンなので、普通韓国人をみると外国風のカラーを持って活動するじゃないですか。だからその反対に、韓国のカラーを外国に引き込もうという考えで作業することにしました。東洋愛で東洋的なラインを書けば、彼ら外国人が考えた時も何か符号するだろうという考えで。

Abstract Bass’という名前ではなく、本人の音楽スタイルと関連して別の表現を考えてみたことはあるのか?

Oriental Future Bass’?未だ私は自分の曲の完成度に満足できないでいます。私が正規アルバムをぱっと出したとしても‘どうやって見せればいいのか?’ととても悩まなければならないでしょう。とはいっても私は大金が入ってくるようなアーティストでもなく、音楽的にもお金を稼がなければならないわけではないので、すでに音楽人として、ミュージシャンというタイトルをつかみ始めたのなら、少しきちんと見せたいのです。‘これがリアルだ’というように。何が本当なのか、とても悩んでいます。

Flower Flower’は確かにMYLKにとても合わせたという感じで、今までとは違うスタイルだ。

アジア風と米国ポップの絶妙なミックス、Odeszaのような雰囲気が好きで書いたのですが、意図せず日本のオートチューンボーカルが曲にぴったりとくっついたんですよ。ですが‘これはこれなりに面白い’と出しました。スタイルはいつも悩みます。私が得意なことをやるのか、時間がかかってもやってみたことないことをやるのか。こんなことについて本当にたくさん悩みます。

 

フューチャーベースに対する考えも興味深い。IMLAYの音楽ポジションはひとまずこの分野だが、普段興味を感じていた分野なのか?

フューチャーベース自体はとても好きでよく聴きます。ですが、正直なところ私が‘フューチャーベースをやる’というよりは、エレクトロニックを基盤にした、‘インタラクティブアート’?でなければ‘描かれた音楽’?そんなことをやりたいです。

フューチャーベースというジャンルが定義されたと考えているか?

整理されてから1~2年もたっていないのではないでしょうか。何らかの基準はあると思います。ヒップホップトラップのリズムを基盤に、それより少しメロディカルに抜き出したり、もう少しシンセを主として進行させたりするか。いずれにせよ、プログレッシブから取ったコードシンセが、トラップの上に載っていてハイブリッドのような感じがあります。ですがフューチャーベースだと外国の雑誌に規定されてしまったから、その中にはある程度の枠があるとみています。個人的にはフューチャーという単語はとてもひっかかります。(笑)今やっているのに、未来だというのですから。一体いつから未来だといえばいいのかも分かりません。むしろジャンル名には‘チルトラップ’がより合っていると思います。

中学校の時にヒップホップの曲を書いたが、Skrillexの音楽を聴いてエレクトロニックに路線を変えたと聞いた。だが、実際今のスタイルはSkrillexとは距離がある。そういった強い音楽など、全く違った電子音楽のスタイルに挑戦する考えはあるのか?

正直に言えば、あります。ありますが、何でしょうか。私ですらも、あるアーティストがいいカラーを持っていたのに、ぱっと方向性を変えてしまうことに対して反感があるんですよ。私からもそんな感情があるのに、一般の人はどれほどそうかと思います。ひとまず自分が表現できることから解き明かしたいです。ジャンルに壁を置いてはいないです。

アメリカに設立された事務所に所属しているが。

大学入試が終わって、入学前まで時間がたくさんありました。その時期に書いた‘Sexual Party’をサウンドクラウドのアカウントに上げて、EDMドットコムのチルトラップジャンルにも上げたのですが、そこで2位に入ったんですよ。それが思ったより影響が広がって、日本の事務所とアメリカの事務所から連絡がくるようになりました。いつも海外進出を悩むようになり、アメリカの会社と契約なしに音源を何回か準備したのですが、一緒にやりながら学ぶことも多く、事務所でも私をサポートしてくれると思い契約することになりました。

2016年のエレクトロニック海外シーンはどのように見渡したか?

もともとフューチャーベースをやっている友人は、私のような宅録の友人たちです。ですが、このジャンルが突然浮上し、Flumeのようなよく企画された有能なアーティストがヘッドライナーに打って出たので、関連したクルーたちも浮上して‘わぁかっこいい。すごくうまい’とみています。エレクトロニック自体がハウス風、あるいはベースミュージック側に向かっていますが、どんな適切な、ポップでもないEDMでもない曖昧なラインのベッドルームプロデューサーたちが作った文化が一つのパートに位置を占め、大きくなっているじゃないですか。この点について肯定的に考えています。

少なくない媒体でIMLAY2017年の期待株に選んだ。負担にならないか?

負担になりはしないです。私は10年程度ルーキーだと思っているんですよ。ひとまず私は国内を鑑みて、実際に大きな活躍をして有名になろうとするなら、同僚がいなければならないと考えています。同じジャンルをやって、一緒に分かちあえなくてはなりませんが、今はそれほどいません。韓国でEDMという市場を生かそうとするなら、私のようなポジションの、プロデュースをする仲間たちが増えて、互いに団結しサポートしながら、なにかしらのカルチャーを作らなければならないと考えています。その基盤が大きくなれば、大衆たちに近づくことができますから。その基盤を今年から磨いてみたいです。

 

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ちょうど同じ2月28日にOhmystarにもインタビューが掲載されていて、どちらを訳すか考えましたが、長いほうのこちらを訳しました。Ohmystarは紹介的な側面が強く、音楽系のwebzine「DiffSound」に掲載されたこちらは、音楽的な側面をより掘り下げて聞いている感じです。どちらも韓国大衆音楽賞のことを触れており、それによって注目が集まったようです。OhmystarのインタビューではSMとの仕事のきっかけについても語っているので、その部分の訳も載せておきます。

­­­­“音楽業界にいる親しいヒョンがSMエンタテインメントの関係者と親しく、特別な目的なく訪問したが、A&R部門の方と挨拶し、音楽について話を徐々にしながら機会がきたと思う。BoAさんとBeenzinoさんがコラボした ‘No Matter What’ という曲の編曲を担当した。

SHINeeジョンヒョンさんとはいろいろな音楽作業をするくらい親しくなり、ヒョンのソロ活動ショーケースでDJをまかされた。昨年12月9日に発売された音源 ‘Inspiration’ は共同作曲した曲として、プロデュースを担当、ヒョンの最初のソロコンサートステージのメイン曲として発売された。”

ちょうどこれらのインタビューが2月頃なので、4月24日に発売されるジョンヒョンの ‘이야기 op.2’ の作業中かなと思わせる言葉もあり、なかなか興味深かったです。ダンスミュージックとk-popの橋渡しとしても、今年の活動が期待されるところです。

 

 

 

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