[THE FIRST訳]アイドルもうつ病を経験しますか?

日刊紙の社会部記者を経てアイドル専門記者になり、『IDOLMAKER』の著者でもあるパク・ヒアがTHE FIRSTで連載している「アイドル話」の第2話を訳しました。この記事について、Twitterで「本当に一度したかった話について、とても気を配りながら書きました。」とツイートしています。

原文はこちら→ 아이돌도 ‘우울증’을 겪나요? http://www.thefirstmedia.net/ko/?p=33022

2017/03/30 by パク・ヒア

#病院に行ったA君

最近、ある関係者の方が静かに話を切り出しました。「A君が病院に行ったようですよ。」以前なら、「それはどういうこと?」と考えたでしょうが、自分でも気づかぬうちに頷いて言いました。「よくやりましたね。本当に。」

すでに推察されているでしょうが、ここで‘病院’というのは精神健康医学科のことです。私たちがよく知っているうつ病、パニック障害、不安症などが起きたときに訪ねることになる空間です。個人的にその話を聞いたとき、本当に安堵しました。A君が病院を訪ねてきちんとした診断を受け、必要であれば薬の処方を受けることもできるのですから。

一般の人にはごく当然のことですが、アイドルグループのメンバーがそういった決断を下すとなると、かなり長い時間悩んだことでしょう。

実際にアイドルの中には少なくない数がうつ病を経験します。韓国人の中でも相当数が(全世界人口の相当数でもありますが)さまざまなタイプの精神疾患を経験するという報告もあることにはありますが、芸能人、その中でも年が若く、一挙手一投足にファンたちの関心が注がれるアイドルメンバーの場合だと、そもそも‘問題解決’自体が夢物語の場合が大半です。いくら彼が弱った状況に陥ったとしても、病院へ行けばレッテルを貼られることをまず心配しなくてはならないのですから。「自分のイメージが失墜してしまうのでなないか、そうなるとファンたちも離れていってしまうかもしれないし…」こういった数多くの不安が、精神の健康よりも重要ではない他のことを優先させてしまうのです。

#「うまくいきますよ」と言ってもいいのか?

「今回のアルバムは本当にうまくいくといいです。さらにかっこよく見せようと、見た目にもどんなに気を使ったか分かりません。」私が答えました。「音楽がよければ、そして一生懸命やればきっとうまくいきますよ。そして今でもとてもかっこいいのだから、あまりストレスを受けないで。」笑顔を浮かべたまま、再びB君が答えました。「人々がずっと見ていますから。」

最初、会議室で5,6人余りのアイドルメンバーたちと対面した瞬間、私が感じたことは一つでした。「ああ、楽だろう。」それもそのはず、社会部修習記者だった時に会った人たちは、大体が不況に疲れた産業団地の人たちだったり、今しがた起こった事故について何も話してくれようとしない警察だったりしたのです。そんな経験のせいでしょう。しばらくはさっぱりした気分で毎回のインタビューを終えました。どうか一言だけでも話してくださいと頼まなくてもいいのだから、それだけでもとても気に入った勤務環境でした。

しかしB君に会ったあと、アイドルとのインタビューは最も難しい作業となりました。グループごとに状況は違い、したがってすぐカムバックを控えている彼らに、むやみに「うまくいきますよ!」と応援の言葉をかけること自体が、誰かには傷を残すかもしれないということが分かりました。なんてことのないお世辞のようにかけた一言。しかしこれが却って大きな負担を与えたり、精神的な疲労感を誘発するかもしれないという事実が分かったということです。私はその日、無理に笑顔を浮かべたB君の表情から一抹の罪悪感を感じました。

その時から注意深く探り始めました。ただ笑っている、力一杯助けを呼んでいる彼らのまなざしに込められているのは本当の‘生気’なのか?いきすぎた疑心かもしれません。しかし、時々ぼーっと窓の外を見やっているメンバーたちが目に入ってきました。それまでは主導的にインタビューを続けているほかのメンバーに隠れて見えなかった姿でした。反面、とりわけ丁寧な態度を見せたり、やたらと朗らかなメンバー達を見ても‘観察’ということをしました。大学に通いながらあるNGOを通じて約2年間、10代の青少年相談士としてあれこれ活動していたのですが、その時に会った青少年たちと似た年頃のアイドルたちを見ていても似た思いを感じたのです。ある程度、見慣れた面も見えたりしました。

おそらく半分くらいは心配から現れた行動でしょう。しかし残りの半分は、恥ずかしながら、好奇心だったでしょう。なぜうまくいっているアイドルでも、困難な時期を味わっているアイドルでも一様に同じような言葉を使い、同じような表情で笑っているのか?あのメンバーは楽しそうに話したが、エレベーターに乗るやいなや大きくため息をついているようだけど?もしかしたら、私が彼らの感情に無礼なことをしでかしたのか?いろいろな考えが浮かびましたが、私は彼らと個人的に付き合いがあるわけではないので何も分かりませんでした。

#アイドルも‘うつ病’を経験する

いつだったか、こっそりと話を切り出しました。「アイドルの中に、普段からうつっぽい子は多いのですか?」皆がためらっている中、一人の関係者の方が口を開きました。

「うつ病でない子を探すのが難しいでしょう。もちろん性格によって状況を受け入れる態度が少し違いますよ。だから各自の差異は多少ありますが、この職業がもともと孤独な職業ですから。」

彼がとても長く付け加えました。

「どんなに事務所のスタッフがいて、仲間がいたとしても孤独でしかないです。特に人気が落ちていく瞬間からは、周辺の人との関係においても本当に多くの変化を味わうことになるんですよ。でも心を開く場所がありません。うまくいっている時は周囲に人も多いです。しかし徐々に彼らが遠のいていくのが感じられ、仕事はなくなり…練習する時やステージに立つときはメンバーたちもいるし、それほど感じないです。でも一人になるとある考えが浮かびます。人気がない子たちはなおさらです。ある先輩たちは後輩たちに前もってそんな状況についてアドバイスをしたりもします。」

‘仮面うつ病’ということがあります。小児および青少年たちが多く経験する種類のうつ病です。研究によると、多数の小児青少年たちは、成人に比べて自分が陥っている状況を認識するのが遅いです。また、色々な状況に起因する感情と関連づけて、うまく自覚することができなくなりがちで、それによって自分がうつだということに気づけない場合が多いです。

「仮面うつ病は青少年期から20代初め頃の成人にかけて多くみられます。誰が見てもうつ病らしくない、そんなうつ病のため、相手と深く対話を交わしたり、よく観察しなければ簡単には見抜くことが難しいです。最初は身体的にどこか具合が悪くて、神経が鋭敏になっていると錯覚しがちです。しかし、いざ治療を受けてみると、それが身体症状ではなく‘身体化症状’だったというのが分かるのです。精神的に影響を受けて、身体的症状化に至るんですよ。」(青少年保健教師K氏)

しかし、すでに放送や紙面インタビューを通じて多くのアイドルグループメンバー達が打ち明けるように、共通してデビューおよび成功に対する圧迫を感じながら生活を続けていくことは事実です。

ですが、多くのアイドルはこういった状況になっても、自分が味わっている心理的苦痛が何なのか、よくわからないまま過ごしてしまう場合が多いです。そもそも競争が熾烈であり、練習に邁進するため、苦痛を体感する間もありません。そのため、後日これが自己喪失や精神錯乱のような状態を引き起こして、薬物や賭博、まともでない恋愛パターンなどあらゆる不安定な解消手段を求める方に流されたりもします。歌手をあきらめてしまう残念なケースが起きたりもします。

しかし、私たちの間でも際立った‘回復能力’を持っている人と、そうでない人に分けられるように、アイドルたちも同様です。だから個人別に注意深い観察が必要なのです。

#‘アイドル’だから大丈夫です?

C君は「ステージを降りた瞬間から、大きな空虚感がやってくる。」と言いました。その話を聞いて、アイドルがステージの上に限っては最小限‘安全’だと感じるような思いがしました。熱烈な歓声と強く降り注ぐスポットライトを受けている間だけは、現実で向き合うあらゆる悩みを忘れることができるのですから。自分を苦しめるあらゆる憂鬱と強迫的な環境から、この職業を選択した自分に対する恨めしさから、唯一自由になれる瞬間なのではないでしょうか。実際、マイケル・ジャクソンが最高の人気を謳歌している頃、あるインタビューで「幸せですか?」という質問が出ると、彼は「一度も幸せだったことはない」と答えたそうです。それからこのように言ったそうです。「コンサートの間だけは比較的解放感を感じると思う。」

これは成功指向的な資質を備えた人であれば、誰でも経験しうる苦痛でもあります。しかし、普通の人には病院へ行こうが、友達に会って打ち明けようが、カメラや録音機はついて来ないですから。例えば、私がとてもストレスを受けて早退しても(あるいはようやく有給を使ったとしても)その姿まで周囲から穴が開くように観察されるような状況でしょうか。

ところが、唯一アイドルが経験するうつ病に対しては隠す雰囲気です。どうしてでしょうか?これは彼らが若いからでもあり、アイドルだけが備える特有の肯定的イメージを浮き彫りにしなくてはならないからでもあります。この2種類がまさにアイドルの‘セールスポイント’ですから。このようなわけで、私は時々アイドルを見る人たちの視線を解いて「‘ideal (理想的)なdoll (人形)’と思った」と話したりもします。現実において、毎日きれいに笑っている人を探すことなどほとんど不可能に近く、よってアイドルという存在から絶え間なく‘人形’のように笑ってくれることを願うのではないかと思う時があります。

「実のところD君はとても深刻でした。ファンたちも気が付くほどでした。うつ病の人なら、なぜか毎日閉じこもっていると思うでしょう?違うのです。D君は以前より人にたくさん会いに行くんですよ。一人でいる時間がとても怖くて、ずっと心の片隅が寂しかったと。」

関係者たちが注意深く伝えてくれたコメントには、華やかな世界の裏側がすべて込められています。基本的な衣食住に制限が強まるときにくる息苦しさ、精神的に愛着関係を形成するのが困難な環境がもたらす不安、厳格な上下関係から感じる恐れ、熾烈な競争構図下で感じる成功への強迫観念、昨日まで自分を二つとなく大事にしてくれたファンたちが他のグループやメンバー達を好きになるかもしれないという焦燥感。ここに個々人の家庭事まで絡み合えば、さらに多様な事例が現れます。一例に、ひどいうつ病にかかったあるアイドルメンバーの場合には、家で‘家長’の役割をしていたというのです。失敗に対する恐れ、期待に応えられない時に襲ってくる貧しさまですべて彼の役割だったのです。彼が20歳を過ぎたばかりの時だったと。

「アイドルはお金をたくさん稼ぐから大丈夫。」
「自分がやりたくてやっている仕事じゃないか。」

それならば、お金を稼げないアイドルたちには「あなたたちが選択した道」だと言えばすむことで、とても人気が出たけれども下降線をたどっているアイドルには「お金をたくさん稼いだからいいんじゃない?」と言ってあげればいいでしょう。

しかし人間であれば、私が誰であれ、どんな職業であれ、私の苦しみを解決してくれる方法があることを切実に願うものです。ましてやまだ20代になりたて、あるいはそのあたりから年を取っていくアイドルたちがお金をたくさん稼ぎ、自分が選択した仕事だという点のために、このような状況を果てしなく耐えなくてはならないことなのか、私にはよくわかりません。

時々、ガールグループEXIDのハニがテレビ番組でしていた話を思い出したりします。「アイドル仲間たちのための心理相談家になりたいです。私がとても苦しかったんです。」アイドルも職業人であり、であれば彼らのための‘精神健康プログラム’もまた必要ではないかと悩むようになりました。

この文を書きながら、自主的にインタビューの所感を記録しておいた紙を何回か探し出し、見てみました。そこに途中で突然、憂鬱が噴出した子がいて、その日私が感じた当惑を記録しておいた内容が目に留まりました。彼が元気でいてくれることを願います。どうぞお元気で。

 

※参考文献 「精神健康と精神分析」イ・ユソプ、ムジゲ社/ 「精神分析的診断 性格構造の理解」Nancy McWilliams著、チョン・ナムン、イ・ギリョン共訳、ハクジ社/ 「スターは狂う」Borwin Bandelow著、オム・ヤンソン訳、ジアン

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最後にでてくるEXIDハニの発言の映像は見つからなかったのですが、原文のキャプチャーから、このMBC<세바퀴>放送の時のようです。

アイドルの精神的なトラブルは芸能ニュースなどの表面に出てくるだけでも、残念ながら後を絶たないので、この文にあるように陰ではおそらく相当数あるのだろうな、と思います。アイドルによって癒されている(悪く言えば消費しているわけですが)立場としては、アイドルの不幸は当然ながら望まないし、お互いにとってWIN-WINであればいいと思うのですが…。何ができるわけでもないですが、努力しているアイドルたちにとって少しでも状況がよくなっていくことを願います。

最後に、アイドルの言葉として、雑誌NYLON KOREA 17年4月号に掲載されていたNCT ジョニーのコメントが印象深かったので、下記に一部を訳して引用します。

“アイドルは他の人の視線の中で生きていき、他の人の基準に合わせて生きていくしかない職業なんです。そんな環境で重心を失わないようにするなら、自分が誰なのか分かっていなくてはならないでしょう。「僕は誰なのか」「僕はどんな人間なのか」をどの瞬間も考えます。”

 

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