[インタビュー訳]SMで求めるA&Rと歌詞について イ・ソンスSMプロデュースチーム室長

作詞家キム・イナによるSM エンタテインメントのA&R室長イ・ソンスのインタビュー的対談を訳しました。以前もVIXXの“On and ON”についての章を訳しましたが、「キム・イナの作詞法」からの抜粋です。本は15年3月に出たものなので、おそらく14年後半頃のものと思われます。これまで、作曲家やプロデューサー、作詞家などのインタビューを訳してきて、たびたびA&Rという言葉が出てきていますが、どういう役割なのか分かる、いったん総まとめ的な感じです笑。SMの組織的な面も垣間見ることができるインタビューです。

原文:「김이나의 작사법 」김이나(2015/ 문학동네)   A&R과의 인타뷰1. 이성수 SM 프로듀싱팀 실장  SM에서 원하는 A&R과 노랫말에 대하여

キム・イナ お忙しいところ、時間をいただきありがとうございます。

イ・ソンス いいえ。私も(作詞を)よくお願いしなければならない立場なので、営業だと考えてくだされば。実のところ、会社の特性上、インタビューは最大限避けているほうではあります。

キム・イナ SMが現在国内の事務所の中でA&Rが最もよくシステム化されていると知られていますが、A&Rは全部で何名ですか?

イ・ソンス ひとまず私を含めて19名です。組織はA&R 1,2,3チーム、インターナショナルA&Rチーム、スタジオチーム、パブリッシング、トレーニングチーム、新人開発チーム等に分かれています。

キム・イナ 韓国の一般的なA&Rチームより規模がかなり大きいですね? A&Rの国際事情的な意味(アーティストピックアップおよびレパートリー構成)に近くもあるような。

イ・ソンス SMはご存知のようにグループがなにしろ多いので、この程度の規模でも実のところぎりぎりです。すべてのアルバムの“プロデューサー”はイ・スマン会長ひとりなので、プロデューサーの企画方向性を現実化する、面白い表現をしようとするプロデューサーという脳を構成する脳細胞組織のような概念といえるでしょうね。

キム・イナ それでもSMは他の事務所に比べて、A&Rに相当の権限があるのを知っています。

イ・ソンス 私たちのチームは会長直属機関でもあるんですよ(SMの組織図は大企業並みの水準であり、会長直属機関は重要ないくつかの部署でだけ構成されている)。権限が多いというよりは、プロデューサーと積極的に意見交換をするといえます。グループ長である私とチーム員間の意見交換も活発ですよ。

キム・イナ プロデューサーとA&Rの違いは何だと考えてらっしゃいますか。

イ・ソンス 難しい質問ですね。実のところ私たちSMの基準でみようとすると、アメリカや韓国の一般的な事務所とは違う部分が多いです。アメリカでの“プロデューサー”とは一般的に編曲ができる人間で、曲のジャンル的特性や全体的な方向性をスケッチして、それに合ったメロディーメイカー、トップライナーとも呼ばれる作曲家たちを集めて曲を完成させる人の意味です。A&Rは言葉通り、歌手とプロデューサーを連結させ、アルバムを制作する過程を任されています。とにかくアメリカの音楽産業の特性上、音盤を制作するレーベルとエージェンシー(マネジメント/所属事務所)が分かれているためにおこる組織的な特性でもあります。アメリカのA&Rは多数がフリーランスであり、“ポイント制度”といってアルバム印税の一部をインセンティブのように得ていたりもします。彼らがいうA&Rは全体的にビジネス的な接し方が多いですよ。
私たちの会社では彼らが定義する“プロデューサー”の役割の相当な部分をA&Rが進めます。だから一緒に作業するアメリカやヨーロッパの作曲家たちが、よくとまどったりもします。「あなたたちはA&Rがこんな部分にも関与するんですね?」と言って。(実際にイ・ソンス室長が作曲家と交わすメールの内容を見ると、コード進行から楽器ソースに関連する内容まで、かなりの音楽専門家/作曲家たちこそができる専門的な域の意見交換がされているのがうかがえた。)
簡単にいうと、私たちは“プロデューサーの業務を代行”する役割とみていただければいいです。もちろん、タイトル曲の選定や、あるグループの長期的な未来を見据えての求めるカラーなど、核心部分はプロデューサーの領域ですよ。でもA&Rも“来年のグループカラー”までは予測しなくてはならないでしょう?

キム・イナ 個人的に東方神起までのSMの音楽カラーが“彼らだけの連盟”のような感じを受けてもいました。一般の人はよくわかりませんが、堅固な城壁の中で多くの人たちが熱狂している感じといいますか?でも、SHINeeを起点に大きく変わった感じです。私が個人的にSHINeeのアルバムが好きなので、そう感じるのかもしれませんが。

イ・ソンス 私がSMに入社して最初に任されたグループがSHINeeです。“Juliette”が収録された正規アルバムを最後にグループ長に異動することになったんですよ。
最近も一番多い悩みですが、その時初めて会社で大衆性とファンダムの間のバランスについて悩みが始まったと思います。今は少し変わった部分がありますが、当時私たちが求めるSHINeeの音楽的なカラーは「ライブセッションが可能なポップ」でした。今度日本でそんな音楽がでて、期待しています。

キム・イナ SMのA&Rが、ときどき作詞や作曲に参与するケースをみたことがありますが、最近もそうですか?

イ・ソンス 初期にそんなことがありましたね。(イ・ソンス室長はSHINeeのアルバムに作曲家としてクレジットされたこともある。“Romeo+Juliette”と“The Name I love”がその例だ。)最近は私や私のチーム員たちが、まずそんなことをできる物理的な時間がありません。

キム・イナ 私がSMと作詞家として仕事をしながら、最も印象深かった点はチーム長、チーム員、誰と話しても、彼らが一貫したマナーと礼儀を守っている点でした。やたらとへつらったりも、権威的だったりもせず、何よりも私自身が尊重されている感じといいますか?(笑) 私の歌詞は本当にたくさんボツにされましたが、それにも関わらずずっと仕事をしている理由でもあります。創作者との業務関係を気分よく維持することもまた、A&Rの重要な能力だと思います。どんなマニュアルのようなものがあるのか気になるほど、態度が一貫していますよね。

イ・ソンス そう言っていただけて、まず本当に幸いです。おっしゃってくださった部分は、おそらくイ・スマン会長の哲学だからだと思います。プロデューサーとして、あらゆる企画の出発点には「曲」があると考えられています。自然とその曲を作る作曲/作詞家たちをもっとも重視するようになるんですよ。会長が創作者の方たちに対する姿勢も、私たちがその方たちに対するときと違うことはありません。話し方にもそんな面が感じられますよ。一例として、イ・スマン会長は今でも私に尊敬語を話されます。そして実際にマニュアルも存在します。創作者と話すときの話法などは、当然ながら教育しなければならない部分だと考えています。

キム・イナ いずれにせよ、一体私の歌詞はどうしてこんなにボツになるのでしょうか?真剣です。

イ・ソンス あ、それですか?(笑)本当に必要でしたら、私がじっくり探って、後で返答差し上げることもできますが…。

キム・イナ いつも悩まされるんですよ。SMのカラーをなぞって書いてみようか?と思っても、そんなカラーでは既によく書いている作詞家の方々がいるし、私に依頼が来たということは私のカラーが必要なのではないかと思って、もともとのスタイル通りに書いてきました。また、採用された作品をみると特別にSM色を出そうと努力はしていない歌詞でもありますし。

イ・ソンス 私たちの会社が求める歌詞は、たいてい含蓄的な表現が多い歌詞です。「あなたをとても愛している」という言葉よりは「あなたを待っている月光」のように書く風な? ただ例を挙げてみたにすぎませんが。
ダンス曲には直説的な表現が多いですが、私たちはそんな指向はしないようではあります。(この答えは実際に私には大きな助けになると思う!)
キム・イナさんがくださった歌詞のなかでEXOの“Lucky”のような曲は、チーム員や私の意見が全部同じでした。SMのカラーと少し違うことは違うが、こんな曲が一つ必要だと考えました。

キム・イナ 意味をもう一度考えてみることのできる表現を好むというお話ですね? ダンス曲の場合としても。

イ・ソンス そうです。直接的にポンと投げかける言葉よりは、3分間の中に考えることが多く含蓄されている歌詞を好みます。もちろん、曲によって直接的な表現が必要な時もありますが、プロデューサーが好む歌詞はだいたい含蓄的な歌詞です。

キム・イナ 私がSHINeeの歌詞を一度セクシーに書いてみたことがあります。もともと少年のようなイメージだから、そろそろ一度くらいは事務所からも男性的なセクシー美を求めるときがあるのではないかと思って書いたのですが、間違っていましたか?(SHINeeの“Sherlock”に、私は野心的にセクシーな歌詞を書いたが却下された経験がある。)

イ・ソンス あ、私たちは決定的な基準が一つあるんですよ。(笑)娘とお母さんが一緒に楽しめる歌詞でなくてはならないということです。お母さんが「私の娘が好きな曲だし、聴いてみようか?」というときに、実際に楽しめる曲かそうでないかが、実際にヒット曲になるかならないかの違いになるんですよ。一緒に聴いたときに少しきまり悪くなるかもしれない歌詞は、だから避けていると思います。例外的に若干のセクシーコードが入るときもありますが。

キム・イナ すぐにその答えはこれから私がSMと仕事をするときに決定的な助けになると思います。

イ・ソンス 幸いです!

キム・イナ SMのA&Rチームは新入社員を多く雇用するほうですか?

イ・ソンス 多いですよ。大部分が新人です。

キム・イナ 面接者としてA&Rを選抜するときは主にどんな面をご覧になるのですか。A&Rの資質のようなものを別に見られるのでしょうか。

イ・ソンス まずすべての会社がそうであるように、一つの会社の社員として働くことのできる基本的な資質を見ます。学力はその人の真面目さを表わす尺度の一つとして考慮します(SMのすべての部門の社員は高学歴者か名門大学出身が際立って多い)。外国語能力は会社の特性上、当然重要です。対人関係は面接で対話をしてみながら予測したりもします。
A&Rを採用しながら特に注意深く見る点といえば、この人がこの仕事について十分に考え抜いているか?という部分です。これは言葉で説明するのは難しいですが、いくつかの質問だけをしてみても感じられます。「私は音楽の仕事がとてもしてみたいです。本当に一生懸命やる自信があります。」という人と「SMのある歌手を見てこんなアルバムを作ってみたいと考えた」という人の差といいますかね?それは私にみえるものでしかないです。
A&Rは、面白い仕事ではないです。本当に、とてもしんどいです。単純に「音楽の仕事をやってみたい」程度の情熱だけ持って入社された方たちは、だから早くあきらめる場合が多いです。ある曲がとてもいいです、という趣向よりは、ある曲がなぜいいのか?という疑問を持つすべを知っている人がいいA&Rになる人材だとみています。

キム・イナ 最後にA&Rとして一番満足している作品について話を聞きたいです。

イ・ソンス 私がSHINeeを担当していた時に本当に好きだった曲がAlejandro Sanzの“Y Si Fuera Ella”という曲なんですよ。この曲をSHINeeのジョンヒョンが歌ったら本当にかっこいいだろうと思いました。その曲が“彼女(Y Si Fuera Ella)”という曲に誕生したんですよ。過程は本当に大変でしたが、個人的にはとても満足した作品でした。

キム・イナ 私がまさにその曲でSHINeeに「ハマった」んですよ!その曲の誕生背景に室長がいらっしゃったんですね?

イ・ソンス いえ、それは全体に曲を編曲して歌詞を書き、ディレクションをしてくれたKenzieさんと歌を歌ったジョンヒョンが作り出した曲ですよ。これは謙遜しようとしているのではなく本当です。録音するだけでまる5日間つかいましたが、原曲の語感(スペイン語)を最大限生かすのに本当にどれだけ大変だったか…ジョンヒョンも気力が尽きるほどで、Kenzieさんも本当に苦労しました。ですが、完成した曲をイ・スマン会長が本当に気に入って、「これは放送しなければ」と決定されたんですよ。この曲を歌うジョンヒョンの姿が、SHINeeの当時のポジショニングの助けになるだろうという判断を下されたんです。

キム・イナ そういうことがA&Rが輝かしい瞬間ですね。アーティスト間の化学反応を作り出す仕事。私が韓国で“成功したA&R”に選ぶ方はお二人ですが、お一人が室長であり、もうお一人はウリム・エンタテインメントのジョン・ビョンギ本部長です。お二人が友人だという事実も今回知りました。室長がご覧になる“ジョン・ビョンギ本部長”のA&Rとしての長所は何でしょうか。

イ・ソンス ジョン本部長は何より曲に対する客観的な視線を維持するすべをわかっています。どんなに経歴があるA&Rだとしても人間ですから、自分の趣向のせいで客観性を失う時があるんですよ。そして、音楽を本当にたくさん知っています。そのデータベースは業界でも知られる水準です。評論家的な視線を持ち合わせているからか、企画面での接し方自体が卓越していると思います。

私がイ・ソンス室長とのインタビューのなかで感じたことは、アーティストたちに対する彼の尊重が心からにじみ出ているという点だった。最初の質問と答えは実のところ重要な内容ではなくても、あえて残した理由はその点を伝えたかったからだ。彼は私にインタビュー時間を「出してくれる」立場ではないということを伝えるため、最初から最後まで「いい歌詞をお願いする立場だから営業しているのです」とくり返し言及した。私が偉そうにしているかのような部分ではあるが、長い時間SMの数多くのA&Rたちと疎通してみた私は分かる。その言葉は、彼らに骨まで刻みこまれている創作者たちに対する尊重と配慮だということを。

====================

キム・イナという創作者と対話することで、双方の立ち位置の違いがよくわかり、よりA&Rの役割が浮き彫りになっているインタビューだと思います。また組織としてのSMのある種堅牢さも。前回訳したSMと契約もしている作曲家/プロデューサーのイム・グヮンウクもSMへの忠義を語っていましたが、キム・イナが「尊重と配慮」というSMの創作者に接する態度がここでも伺え、こういった信頼関係はやはりクォリティの高い作品を生み出し続けていくことにもつながるのかな、と思います。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中