[エッセイ訳 「キム・イナの作詞法」より] ファンダムとの交感

IUやBrown Eyed Girls、EXOなどのアイドルからチョ・ヨンピルまで、300曲以上もの作詞を手掛けているキム・イナ。作詞家キム・イナがその作詞法をあますことなく記した本、「キム・イナの作詞法」から、VIXXがブレイクした<On and On/傷つく準備ができている>についての章を訳してみました。

原文:「김이나의  작사법 」김이나(2015/ 문학동네)  팬덤과의 교감

私は自分が制作に参加した、あるいは参加する歌手たちのファンダムの反応をとても熱心にモニターするほうだ。

彼らの求めることが私のモチーフになるときもあり、大衆たちは知らなくてもそのファンダムだけが知っている要素を挿入し、コアファン層を楽しませるパートを作り出すときもある。一例にIU<YOU&I>の歌詞中、「今、私の姿を傷つけてもいい」という部分は、IUの多少激しいファンダムであるDCインサイドIUギャラリーでコンサート祝賀用に送った花輪の文言に対する一種の回答だった。コミュ二ティー特性上、ほかのファンたちに対して摩擦がおきるときが多いということは分かっているからか、「私たちはIUを傷つけません」という文句を書いて贈ったのだが、その姿がとてもかわいく、おもしろかった。やはりこの曲が出たとき、彼らからも気が付いて問い合わせがあり、その意図が合っていると確認もしてくれた。全体的な内容を損ねず、脈絡に合えば、これからも時々は使ってみる考えだ。

新人アイドルグループの場合、ある一つの歌詞の中のキャラクターコンセプトがいい反応を得たとき以降、他の曲でそのキャラクターをより強調してイメージを固めてあげるのがよい。VIXXとの制作がそうだった。

VIXXの事務所は独特なことに、ほかのことよりビジュアルコンセプトを先に決めて作詞依頼が来た。私との初めての作業だった<On and On/傷つく準備ができている>もそうだった。スーツを着たヴァンパイアコンセプトだった。しかし、歌詞に‘ヴァンパイア’が直接的に出てくる必要はなく、むしろ現実的だとよい、ということだった。私はヴァンパイアが夜にだけ活動するという点についての比喩で‘月光’が入っている若干の部分を除いて、他は独特のかたちの執着について話を書くことにした。足を踏み鳴らしながらすがりついたり、望夫石※のように待つキャラクターではなく、‘それにもかかわらず愛している’ロマンティックな マッチョを描きたかった。

※訳注 望夫石 貞女が遠くに行った夫の帰りを待ちあぐんでそのまま石に化したと伝えられる石。

相手のキャラクターは悪い女の典型だ。希望拷問をするかのように不可思議な態度のまま距離をおき、あきらめようとするや望みを残す女。(書きながらこの若い歌手たちにこんな狡猾な女性キャラクターを対象にさせるのは罪悪感を感じたりもした。)男はこんな女性を愛したらいつかひどく傷つくだろうということを本能的に知っている。それにもかかわらず、この体ひとつが傷ついたとしても、今この時はあなたを愛するのだと告白することがこの歌詞のキャラクターの核心だ。

話を解き明かして書くと、すこし手足が縮こまるキャラクターのようだが、舞台では過剰なキャラクターであるほど歌手が多彩な表現ができるようになり、シナジーが生まれる時が多い。ビジュアルコンセプトといい歌、華やかなダンス、そこにメンバーたちの歌唱力と表現力が加わり、想像以上の結果物が現れた。この曲でVIXXはアイドルグループのターゲット層からよい反応を得て、既存のファンたちの愛もまた確認することができた。その時見た面白いフィードバックの一つが「私たちのオッパたち、まさに虎口※だTT、かっこいい虎口」という言葉だった。傷つく準備ができているから、もて遊ぶなりしてくれ、腑抜けにしてもいいから、という話を、虎口という表現はとてもよくとらえていると思った。以後、私はVIXXの歌詞を書くとき<VOODOO DOLL/呪いの人形>まで、この‘虎口’というキャラクターを逃さなかったので、この面においてもVIXXファンダムに感謝をしなくてはならない。悪い男や悪い女に対するときは知らずにやられるキャラクターがあり、知っていてやられるキャラクターがある。<On and On/傷つく準備ができている>は、明らかに知っていてやられるキャラクターだ。すくなくとも馬鹿な虎口ではない、ロマンティックな虎口だろう。

※訳注 虎口 行き詰まりの非常に危機的な状況

デモは暗く悲壮に進み、サビで一気に破裂する印象だった。この一気に破裂する印象は舞台表現も大きく意のままにした。サビ直前のフレーズで‘トタシ ウルコッ(また、こみ上げる)’という部分は感情が破裂する直前の助走のような役割になるよう願って書いた。

サビでは以前の感情線上とは、ばっと違った表現が必要なように思った。前の部分は比喩や状況叙述で流れていて、初めて感情が破裂したら効果的だと思った。例えば起‐承‐結構成のような。実のところ、歌詞を文字にだけおいてみるとサビにはこれといったものはない。‘僕にどうしてこんな、あなたは僕にどうしてこんな’。しかし、そんな言葉が‘破裂するメロディ’につくと、やたらと強く書いた言葉よりはるかに生きているように感じられる。‘僕にどうしてこんな’という言葉は本当に怒りが現れたときに出る言葉だからだ。

各節のエンディングはぷつぷつと途切れる感じのワンコードメロディだった。流れる発音を最少化し、その途切れる感じが最大限生きる発音を探した。そうして誕生したフレーズが‘ト ムルㇷ゚ クルヌン ナン タッチル ジュンビガ トゥエッソ (また膝をつく僕は傷つく準備ができている)’だった。

この曲には後に<Hyde>等の曲を経て、<VOODOO DOLL/呪いの人形>という曲があった。

‘ヴードゥ人形’というメインコンセプトが決められていた。

呪いをかける黒魔術、ブードゥコンセプトは(Brown Eyed Girlsの)<Abracadabra>の時に一度とりあげたので、同じ視点から扱うのははばかられた。であれば、あらかじめ話者がブードゥ人形だったらどうだろう、という考えで歌詞を解き始めた。デモ自体もマイナーコード特有の哀しい感じがあったので(VIXXのヒット曲はたいていそういった情感がある)、呪いをかける立場よりは、呪いをかけられる方がとても似合うように思った。もちろん、どの話も‘比喩’ではあるが。自分を愛さない女が、ほかの男のために胸を痛めているのがとても耐えがたい話者は‘そいつの名前だけ言え。僕がすべて解決してやる’と、腕をまくり上げて願い出る。

この歌詞で、虎口の終わりを見るようだった。わかっていても、だまされていることでもあき足りず、もはやほかの愛のために自分を利用しろ、というキャラクターだ。‘利用価値があるなら、捨てることもないだろう’という考えまで行きついた虎口中の虎口。

この曲もやはりサビがサイダーのように破裂する鮮烈な感覚があった。<On and On/傷つく準備ができている>と同じく、その破裂する感覚を生かそうとヴァースに対して突然感情をばっと変わらせる文章を使用した。そして<On and On/傷つく準備ができている>が、VIXXが取り上げられるときに、いまだ外されない曲だという事実を勘案して、知らない人に‘僕たちがこの曲を歌っている歌手だ!’と知らしめ、ファンたちには馴染みの情感を再び思い起こさせようという目的でサビ直前にそのタイトルをまた歌詞に書いた。ちょうどメロディー音節にもぴったりと合った。

虎口という表現がちょくちょく出てきたが、基本的に私はVIXXに付加したキャラクターをかっこよく感じさせることができる理由は、この虎口的キャラクターが非常に強い自信を持っているためだと思っている。想像してみてほしい。実際にそんな愛を成そうとしたら相当な自尊心がなければならないだろう。普通、自信と自尊心は反比例するが、一般的には自尊心が傷ついて、到底そんな自信を維持することができないから、ということだ。

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